Sifu(紙布)との出会い ver.4

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お気に入りのウォーキングコース

私が、紙布(シフ)作家の桜井貞子先生を再び訪れたのは翌年にはいり、満開だった桜も散り、新緑の葉が茂る季節となっていました。

投薬後の手術の経過もよくウォーキングを再び始めるくらいに体力も戻ってきていました。

 

水戸市の作業場兼、自宅の庭に車を乗りいれエンジンを切ると同時に、桜井先生は玄関の外まで満面の笑顔で出迎えてくれていました。

時刻は、午後2時頃。

客間に私を案内してくれるとすぐに、「コーヒーは飲まれます?」と聞かれ、毎日飲んでいますと返事すると、「それはよかったわ」とコーヒー豆を手動のミルにいれると、ゴロゴロと先生は挽きはじめました。

お亡くなりになったご主人もコーヒーが好きで、その影響で先生も好きになり、必ず豆は挽きたてを落とすことにこだわっているそうです。そして、私と同様に先生もコーヒーはブラックで飲み、お茶菓子に、林檎のケーキをごちそうしてくれました。

先生とご主人との二人三脚で紙布製作にとりくみ始めた頃の話を聞かせてくださいました。この40年間という長い年月には言葉にする以上はるかに苦難や立ちはだかる壁が数多くあったなどは、具体的な事は解らぬども想像はつきます。しかし諦めずに貫き通す原動力とはなんだったんだろう、と思いながら私は先生の言葉に耳を傾けました。

わずかに残った文献をもとに技法を研究し、ご主人が製作の過程をその都度細部までの資料を作り、先生をしっかりサポートしていらしたと同時に、「どんなに辛くても主人がやめせてくれなかったのよ」と話す言葉の裏には、ご主人に対する深い信頼関係を感じとれました。

sifuito1紙布(しふ)の糸を撚る

紙布はまずは糸作りからはじめます。

90㎝×60㎝の4枚重ねられた和紙を屏風畳にして折ります。紙布は和紙が非常に大切なの、と先生は話されます。紙布専用の手漉き和紙は一定方向に繊維を揃え糸にする為の強度をだす手法をとられています。sifuito2

桜井先生の使われている手漉き和紙は、同県の常陸市で作られている、那須楮の最高級の和紙です。茨城県無形文化財にもなっている西ノ内紙の「紙のさと」さんの菊池さんが漉かれた和紙です。  重なった和紙を2㎜間隔で端は切らないように、カッターの刃を滑らせていきます。

sifuito31反(約37㎝×12.50m)を織るには約1万mの糸が必要となる為これが、50枚も必要となるのです。切った和紙を湿らせて乾かないうちに、専用の石の上で揉みます。

先生にすすめられて、試しに恐れ多くもこの私が、揉む作業をやらさせていただきましたが・・・・勿論、何度も和紙を切ってしまったり、揉んで細い糸の原型になるまでに乾いてしまい、揉めなくなったりと散々たるものでした。

sihuito5先生が、大丈夫修復できるからと言って下さったので、ホッとはしましたが全身に汗をかいてしまいました。難しいとは思ってはいましたが、予想以上でした。

 

この作業の後、糸車で糸に撚りをかけていきます。実は、この作業も先生に「撚ってみる?」と言われ私も体験してみたのですが、云うまでもありません・・・・・・

それからしばらく私は、先生の紙糸作りを見学しました。そこでまた淡々とこなす先生の姿に初めて展示会でお会いした時の存在感と同じ空気をまた肌で感じていました。

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和紙は気の遠くなる作業を経て紙糸へ、ここから更に染色・機織りの工程を経て紙布(しふ)へとなっていくのです。

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